2021年05月16日
中身にまで影響を与える表紙もある
装丁の第一人者として知られる平野甲賀さん。彼が手がけた作品のリトグラフやポスターの展示会が、繁華街にある雑貨店兼ギャラリーで開かれた。見覚えのある独特の描き文字がずらりと並ぶ。平野さんの名は知らなくても、沢木耕太郎「深夜特急」とか、植草甚一やサブカル本の出版で有名な晶文社の書籍のタイトル文字といえば、思い出す人も多いだろう。
私が「甲賀フォント」として最初に覚えているのは、劇団のチラシだった。なじみの印刷所の営業マンから「この劇興味ある」と見せられたのは「68/71黒色テント」の「阿部定の犬」。元劇団員としてチケット販売を手伝っていた。演目の文字が気に入り即購入したが、いつも背広をぴしっと着こなし物腰も柔らかく笑顔で接客する彼と、黒色アナキストの劇団員のギャップにも驚いた。
そんなことを思い出しながら作品を見て回った。 ギャラリーの壁には作品のリトグラフ20点ほどと、装丁した書籍の古本約100冊が展示されていた。A1サイズのファイルに入った原寸原稿も鑑賞できた。大胆な描き文字が多いが、一方で写植文字を「寸止め」で切り貼りした甲賀ヅメの作品も。どちらもミリ単位以下にこだわった、緻密な仕事ぶりに目を奪われた。
彼のデザインは「パッケージデザインじゃないですね。中身にまで影響してきちゃう。文章がちょっと違って読めてくるような気がする」(建築家・石山修武)と評されている。
さてこちらは、東京2020組織委員会。新しい「表紙」の方は、わきまえない表紙として、日本社会のジェンダーギャップにまで影響力を発揮できるか注目される。
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