2022年02月26日

筆文字の書を模写していた少年





 「小学3年の息子が博物館で模写をしていたらスタッフからとがめられた」と、父親がSNSに投稿した。この報告に、欧米の多くの美術館・博物館で認められている模写が、なぜ日本では禁止されることが多いのかと昨年末話題になった。

 住んでいる市の美術館の条例を調べてみた。模写は原則禁止と定めている。ただし、学術研究等のため、教育委員会が特別の理由があると認める時は「いいよ」と書かれている。その場合でも許可申請書を提出し、1点につき千円の手数料が必要。これでは児童、生徒の模写はほぼ無理だろう。

 さらにあれっと思ったのは、条例では撮影と模写が同列に扱われ「撮影等」となっている。写真撮影はフラッシュをたいて作品を劣化させるとか、その写真を販売して著作権問題が起こるなどで禁止も理解できる。模写ではそのようなことはないだろう。模写の敷居を下げられないのかと思う。

 このニュースを目にして、三十数年前に職場の親睦旅行で訪ねた大英博物館の光景を思い出した。人気のロゼッタストーンやエジプトの発掘品、美術品をはじめ多くの展示物の前で模写をしている大人や子どもを見た。椅子に腰掛けたり床に腰を下ろしたり、それぞれのスタイルだ。

 そんな中で、小学校高学年か中学生になったばかりくらいの少年が目に留まった。床に腹ばいになって白い用紙に熱心に鉛筆を走らせていた。彼の視線の先にある、器か仏像を描いているのかと覗(のぞ)いてみた。彼が熱中していたのは、それらの奥の壁に展示されていた掛け軸に書かれた墨文字の漢字だった。東洋人にはない発想に感嘆した。




  


Posted by kotota at 16:14Comments(0)エッセー模写