自然遺産登録に「宿題」も山積み
ユネスコの世界遺産委員会が7月26日、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」を自然遺産に登録した。亜熱帯の森にアマミノクロウサギやイリオモテヤマネコ、ヤンバルクイナなど多様で希少な固有種の動植物が生きている島として評価された。日本の自然遺産としては5件目で、最後のリスト登録になる可能性が高い。
正式決定の日、小学2年生の孫は、照葉樹林が広がる奄美大島にいた。登録後は「人流」がどっと増えると考えてのことらしい。大型で強い台風6号の影響で天候は良くなかった。それでも名瀬の金作原(きんさくばる)の探索、マングローブでのカヌー挑戦、ナイトツアーでアマミノクロウサギとの遭遇など奄美の自然を体感した。
印象に残ったものを聞いてみた。「森ではアマミイシカワガエルがすごかった」「海ではオカヤドカリの産卵が見られてうれしかった」「それにシオマネキ。マングローブの干潟に1500匹くらいいたよ」。小さな生き物の中に大きな宇宙を見た、ファーブル的時間を過ごしたのだろう。
登録が決まった翌日、奄美群島12市町村長が経済効果を波及させる「観光マスタープラン」の策定を決めたとのニュースが流れた。彼らは自然遺産登録を、テーマパーク開設と勘違いしているようだ。登録は「ゴール」ではなく、先人たちが残した遺産を未来につなぐ「スタート」にすぎない。
委員会が要請した絶滅危惧種の交通事故死減少や河川再生の対策をはじめ、動植物の密猟や盗掘、環境汚染への対応など多くの「宿題」がある。来島者が増える前に手をつけるのは、これらの解決策からだろう。
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