歓迎されないパンデピック開催

kotota

2021年07月26日 13:21





 父の日に娘から贈り物が届いた。段ボール箱に「ガラス、こわれもの注意」のシールが貼られていた。妻は「ワインかビールのグラス」と見立てた。これまでビール、清酒などアルコール類だったので、妥当な推理だ。

 箱を開けてみると、奇妙な形をしたガラスのオブジェが入っていた。中心に置かれた入口を閉じた試験管のような物と、上下にずれた左右のガラス球2個が、曲線と直線の4本のガラス管でつながっている。学校の理科室の片隅に置いてある、実験道具を思い出す。

 説明書を読むと、19世紀初頭の欧州で、航海時に使われたストームグラス(天気管)を模した物だった。ガラス容器には、樟脳(しょうのう)を溶かしたエタノール液が詰められている。溶液や白い結晶の沈殿の状態によって、晴、曇り、雨。嵐、雪などの天気を予測したそうだ。

 若きチャールズ・ダーウィンが調査のため乗船した、木造帆船のビーグル号や、小説『海底二万里』に登場する潜水艦ノーチラス号にも設置されている。安心な航海と船員の安全を考える船長にとって、嵐を避けるなど気象予測が第一の任務。ストームグラスは航海の必需品だっただろう。

 コロナ感染の拡大を危惧する国民と専門家の意見を無視し、パンデピック(パンデミック下のオリンピック)は強行される。安心安全の言葉を念仏やお題目のようにつぶやくだけで。ウイルスに忖度(そんたく)を求めるかのように、関係者を「別枠」扱いしながら。この原稿を書いている6月下旬は、東京の感染者数は上昇に転じた。自ら嵐に向かう無謀な「TOKYO2020」号の、航海ではなく後悔が始まろうとしている。

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