浪花の理論物理学者が負けた商魂

kotota

2021年06月23日 18:46





 コロナ禍で外出を控えるようになった人々の、家で快適に過ごす消費行動が「巣ごもり需要」と呼ばれている。ゲームや音楽事業、宅配関連が伸びている。「巣ごもり家電」では、たこ焼き器が前年比で40%近く伸びているとの統計もある。

 ところで、たこ焼きのサイズは、なぜ半径2㌢前後なのだろう。浪花のアインシュタインと呼ばれる橋本幸士・京都大学大学院教授が、著書「物理学者のすごい思考法」で、この「謎」に挑戦している。「ブラックホールの中心はどうなっているのか?」と「たこ焼きの半径にはなぜ上限があるのか?」みたいな話は、まったく同じことと「日常のなかの物理」を日頃から考えている全身物理学者。

 たこ焼きの半径に2㌢の上限があることと、カブト虫の体部分に上限があることに共通点を見出す。カブト虫は、外骨格という硬い殻で表面を覆い全体重を支える。大きなものでも、体の天地は半径2㌢ほどしかない。巨大なカブト虫は、長い歴史を経て体を扁平(へんぺい)にすることで、天地の距離を最小にしたまま、壊れにくい体を作り上げた。たこ焼きは、表面は固めでひと噛(か)みするとトロッとした中身が口に広がる。この本質を残したまま大きくするには、円盤のような形にするしかないという「解」に達した。

 しかし近頃、半径5㌢のたこ焼きが焼けるジャンボとかギガたこ焼き器が売られている。超ひも理論、素粒子論の世界的最先端を研究する天才は、カブト虫の発達史より商魂の執念が上回ることを仮説に繰り込まなかった。教授が本書で言う通り、世の中の問題への「解」は多種多様だ。




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